技術コラム

精密金属加工とは?定義や特徴について

 精密金属加工は半導体製造装置、産業用機械、医療機器、航空機器などで需要が高まっている加工技術です。

ここでは、精密金属加工の定義や特徴について説明します。

 

 

①精密金属加工とは

 精密金属加工とは、金属に0.001~0.01mmのマイクロスケールの精密加工を施すことを指します。加工内容としては、高い精度の面粗度・寸法・形状の実現です。

 この精密金属加工は、医療機器、半導体製造装置、航空機の部品製作によく用いられます。

 

>>医療機器の部品製作について

>>半導体製造装置の部品製作について

>>航空機の部品製作について

 

 よく精密加工と比較として、汎用加工というものが挙げられます。

汎用加工は、0.01~0.1mmの精度の加工を施すことです。

実現可能な精度の水準は、精密加工は汎用加工より優れています。

しかし、加工コストでは、精密加工よりも汎用加工が優れています。

そのため、どちらの方が優れているというわけではなく、不要な精度の要求を避け、最適な精度の加工を施すことが、重要となります。

 

 

②精密金属加工を実現するためのポイント

 マイクロスケールの精度が求められる精密金属加工を実現するためには、以下の3つのポイントが重要となります。

 

・工作機械の精度

・外気に影響されない室温を維持できる環境

・マイクロレベルの測定と品質保証

 

工作機械の精度

 精密金属加工を行う上で、第一に必要なものは工作機械の精度です。この工作機械の精度は、分解能とも呼ばれます。

 一般的に、工作物の精度を実現するためには、それ以上の分解能を持つ工作機械が必要となります。言い換えると、0.1mmの工作物を製作するためには、0.01mmの分解能を持つ工作機械が必要だということです。例え、工作物の精度と同じ分解能を持つ工作機械で、工作物の製作が出来たとしても、安定した量産加工は実現できません。

 また、不良品の多さから、却ってコストの上昇に繋がりかねません。

 

外気に影響されない室温を維持できる環境

 精密金属加工を行う上で、室温は重要な要素の1つです。金属は温度によって形状の変化が起こりやすいという性質を持っています。この形状の変化は、室温や外気などの1℃単位の変化でも起こり得ます。

 肉眼では分からないほどの変化ではありますが、0.001~0.01mmの精度が求められる精密金属加工の世界において、この変化は工作物の品質を左右します。そのため、外気に影響されない常に一定の温度を保った部屋が精密金属加工において、必須です。

 

マイクロレベルの測定と品質保証

 精密金属加工を行う上で、マイクロレベルの測定と品質保証も重要な要素の1つです。これは、工作機械の精度で述べた内容と同じ原理です。0.1mmの工作物の精度を測定するためには、0.01mmの測定が可能な精密測定装置が必要となります。これは物差しをイメージするとわかりやすいでしょう。1cm単位にメモリが書いてある物差しでは、1cmも1.2cmも同じ1㎝と測定してしまいます。しかし、1mm単位にメモリが書いてある物差しでは、1cmと1.2cmを正確に測定することが可能です。

 また、これらの品質保証をするためにも、JIS Q 9100やISO9001などの登録証の獲得が必須となります。

 

 

材質ごとの精密金属加工

 精密金属加工と一括りにいっても、金属には様々な種類があるため、その種類によって加工方法を変えなければなりません。

精密金属加工をする上で、考慮しなければならないポイントは、下記の3つです。

 ・切削温度

 ・切粉の形状

 ・工具との親和性

 

 「切削温度」とは、要するに切削加工を行う際に切削工具と被削材の間で発生する摩擦熱のことを指します。

切削温度が高いと、工具が曲がりやすくなってしまうため、工具の短命化を引き起こしてしまいます。

 

 「切粉」とは、被削材を削った際に排出される削りカスや切りくずのことを指します。

切削時に排出される切粉が粉状ではなく、繋がった状態で排出されると、切削工具に絡んで工具損傷を起こしかねません。また、切削油も掛かりにくくなってしまうため、工作物の精度の低下にも繋がってしまいます。

 

 「工具との親和性」とは、切粉の工具との溶着しやすさです。工具との親和性が高いと、工具との溶着が発生しやすくなり、工具欠損の原因になりかねません。

 

 精密金属加工を行う際は、材質の切削温度・切粉の形状・工具との親和性を考慮して、最適な工具や加工方法を選定しなければ、0.001~0.01の精度を実現することができません。

 

具体的な材質の例をいくつか挙げます。

 

チタン合金

 チタン合金は医療用インプラントや航空機材料として使用されています。

重さ(鉄の半分)・強度・耐食性などの点で優れた素材なため、他の業界からも高い需要がある素材となっています。しかし、粘度が高い、親和性が高いなどの難点のみならず、熱伝導率が低いという難点も有しています。熱伝導率の低さは発火しやすさに繋がります。

 これらの特徴からチタン合金は難削材とされ、加工難易度が高い素材の1つとされています。チタン合金を加工する際のポイントとしましては、工具へのコーティング、水溶性切削油の選定、切削熱のコントロール、引張応力の抑制などが挙げられます。

 

>>チタン合金をもっと詳しく!

 

インコネル

 インコネルは超耐熱合金でニッケルが主成分の材料です。

その名の通り、高温でも強度の落ちない材料なので、航空機エンジンなどの過酷な環境で使用されています。しかし、高温でも強度が落ちないというメリットは、加工時には切削が困難になってしまうというデメリットに繋がります。また、インコネルは親和性も高いため、チタン合金と同じ難削材の内の1つです。

 インコネルを加工する際のポイントと致しましては、耐熱温度が高いセラミックス製工具の使用、親和性の高さによる高温における化学反応を抑えるために回転速度の抑制、工具寿命の管理などが挙げられます。

 

SUS630

 SUS630は航空機の降着装置の強度部材として使用される析出硬化系ステンレスです。

硬度が非常に高いという特徴がありますが、その高さ故に加工時に切削熱が高くなり、工具を消耗しやすいという難点もあります。SUS630も難削材の1つとされています。

 SUS630を加工する際のポイントとしては、ニッケル含有量の高さから工具に溶着しやすいためフライス加工の使用を抑える、仕上げ工程に時間を掛けすぎないなどが挙げられます。

 

 これら3つの難削材に精密金属加工を施すためには、最適な工具・加工方法の選定のみならず、技術力も必要となります。

 

 

形状ごとの精密金属加工

 精密金属加工といっても、その加工方法は多岐に渡ります。また、加工方法によって適している工作物の形状が異なります。

 ここでは大きく3つの加工方法をご紹介します。

 

旋削加工

 旋削加工は、回転している材料に刃具を当て、削ることで目的の形状へ加工することを指します。その加工方法から、円筒状の工作物を加工することに適しています。

 

フライス加工

 フライス加工は、回転する刃具を材料に当て、削ることで材料を加工することを指します。

その加工方法から、工作物の平面を加工することに適しています。

 

研削加工

 研削加工は、高速で回転する砥石で、工作物の表面を少しずつ加工することを指します。

その加工方法から、工作物の面粗度を高める加工に適しています。

 

 

 これらの加工方法を行うためには、専用の機械を使用する必要があります。しかし、精密金属加工を行うためには、専用の機械以外にも必要なものがあります。それは、工作物に合わせて設計された専用の刃具です。多くの場合、市販の刃具では精密金属加工を施すことができません。

 0.001~0.01mmの精度の加工を施すためには、工作物に合わせた専用の刃具が必要となります。そのため精密金属加工を行うためには、精密金属加工のみならず、刃具の設計もできるサプライヤーを選定しなければなりません。

 

>>旋削加工について

>>フライス加工について

 

 

精密金属加工VA/VE技術ナビにお任せください!

 精密金属加工VA/VE技術ナビを運営する佐渡精密株式会社は、1970年の創業以来、切削加工を中心に、表面処理、熱処理・研削・組立などを加えた精密金属加工のプロフェッショナルとして、様々な精密金属加工を行ってきました。そのお取引先は、医療機器、半導体製造装置、航空機などの、高度な技術レベルを求められる業界のお客様が多く、皆様には大変、ご満足いただいたとの声をいただいております。

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