技術コラム
【表で解説】純チタン・チタン合金の強度・切削性・用途について
チタンとは
チタンと聞くと一般的にはゴルフクラブやメガネフレームを思い浮かべる方が多いかもしれません。実はその他にもチタンの持つ「人体への親和性」「軽量で高強度」「耐食性」などの優れた特徴から、医療分野や航空機をはじめとして現在様々な分野で使われています。
チタンには種類があり、大きく純チタンとチタン合金で分かれており、その中でも性質によりさらに種類が分かれています。今回はそんなチタンの種類や特徴について解説していきます。
純チタン、チタン合金の成分
純チタンは純度によって1種~4種に分けられており、番号が小さいほど、純度が高いチタンになります。
チタン合金は一般的にTi-6Al-4V合金を指す事が多く、6-4チタンなどと呼ばれており、JIS規格では60種に分類されます。この合金は重量%で6%のアルミと4%のバナジウムが添加されていることを示しています。
6-4チタンの中でも、医療用に使用されるチタン合金はELI材(エリー材)と呼ばれます。同じくTi-6Al-4V合金ですが、酸素や窒素などの成分含有量がより低く抑えられている材質で、JIS規格では60E種として区別されており、ASTM規格※ではASTM F136で規定され、こちらも医療用の材質として頻繁に使用されます。
チタンやチタン合金はJIS規格でJISH4600(板)、JISH4650(棒)で規定されています。
※ASTM規格は世界最大・民間・非営利の国際標準化・規格設定機関ASTMインターナショナルが定める工業規格
単位:%
引用元;JIS H4650:チタン及びチタン合金-棒 一部抜粋
チタン、チタン合金の強度
純チタンは純金属としても工業的によく利用されており、1種~4種で機械的性質に違いがあります。
純チタン1種
酸素(O)や鉄(Fe)の添加が極力抑えられているので強度は低いですが、良好な展延性、成形性を持ち、耐食性も良い種類になります。
純チタン2種、3種
この種類は強度と展延性のバランスが良く、一般的に手に入りやすくよく使われる種類です。用途としては航空機の機体やエンジン部品、海洋構造物、化学工業用機械の構造部品として多く使われます。
純チタン4種
特に強度を要する場合はこの種類が用いられ、純チタンの中では最も強度が高いです。
【純チタン材の機械的性質】
引用元;JIS H4650:チタン及びチタン合金-棒 一部抜粋
チタン合金として最も多く用いられるTi-6Al-4V合金(60種)はα-βチタン合金に区別されており、アルミ(Al)を添加することで形成される「高温に強く強度が高いαチタン合金」と、バナジウム(V)を添加することで形成される「高い靭性と加工性を持つβチタン合金」で構成されています。
特にTi-6Al-4V合金は強度、伸び、靭性などのバランスが良く、耐熱性や疲労強度にも優れてるため汎用的に使われています。
【チタン合金材の機械的性質】
チタンの切削性
チタンは優れた性質を多く持ちますが、その特徴の裏返しで、切削しづらい材質です。まず、引張強度と靭性が高いので切削時の加工抵抗が大きく、加工方法によっては工作機械を選ばないといけません。また熱伝導率が低いため熱がこもりやすく、工具材質との化学的親和性の高さから、摩耗や溶着が起きやすく、工具折れのトラブルに繋がります。加えて、スプリングバック(弾性)の大きい材質でもあるので、形状によってはたわみが出てしまい寸法精度が不安定になるのです。
また、チタンは切粉の取り扱いについても注意が必要な材質です。糸状の切粉や粉末のような形状では、急激な酸化を起こすため火花で引火したり、自然発火したりする場合もあります。
以上からチタンの切削加工は適切な工作機械、工具、切削油、切削条件での加工を要し、取り扱い面でも気をつけなければならない材質です。
チタン、チタン合金の特徴、用途
チタンは「軽量」で「高強度」という特徴があります。比強度(同じ重量当たりの強度)で比べるとアルミ材の約3倍、鉄材の約2倍の強度を持っており、構造物の重量を軽量に抑える事が出来ます。この特徴を活かして航空宇宙分野では機体の構造材、エンジンの部品、燃料タンクなどに。モータースポーツ分野ではエンジン部品、排気管などに用いられています。
またチタンは人体への有毒性が他の金属よりも低く、アレルギーを起こしにくいという特徴も持っています。そのため医療分野での使用、特にインプラント部品や心臓のペースメーカー、補填具など人体に埋め込まれる部品に頻繁に使用されます。
他の特徴として、耐食性、特に海水耐食性に優れているため、電力・プラント関連の海水淡水化装置や熱交換器などへの使用、軽さを活かしてゴルフクラブなどスポーツ用品に使われています。
チタン合金の中には変形後、加熱することで元の形状に戻る「形状記憶合金」、変形させている力を取り除くだけで元の形状に戻る「超弾性合金」というものもあり、これはニッケルとの合金として知られています。用途として身近なものではメガネフレーム、医療機器ではカテーテルのガイドワイヤー、ステントや歯や巻き爪の矯正具などに使われています。
当社のチタン加工事例
医療用チタンインプラント
こちらは、5軸マシニングセンタでの医療用チタンインプラントです。材質はチタンを使用し、サイズ:45mmX160mm、厚み:15mmです。当社は、数多く手掛けている医療機器......
まとめ
・純チタンは1種~4種まで種類があり、強度と伸びが異なります。代表的なチタン合金はTi-6Al-6V合金になります。
・切削しづらい材質で、特徴を理解して適切な加工方法が求められる材質です。
・航空宇宙分野や医療機器部品などをはじめとして様々な分野・用途で使用されます。
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今回はチタンの特徴と切削加工における注意点について説明しました。
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精密金属加工VA/VE技術ナビを運営する佐渡精密株式会社は、チタンの豊富な加工経験を持っています。1970年の創業以来、切削加工を中心に、表面処理、熱処理・研削・組立などを加えた精密金属加工のプロフェッショナルとして、様々な精密金属加工を行ってきました。そのお取引先は、医療機器、半導体製造装置、航空機などの、高度な技術レベルを求められる業界のお客様が多く、皆様には大変ご満足いただいたとの声をいただいております。
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