技術コラム

銅、銅合金の特徴・種類について

銅、銅合金とは

 銅は金属材料の一種で、人類が初めて使った金属材料といわれています。

青銅器時代といった言葉を耳にしたことはあるでしょうか?この名前が示す通り銅や青銅は紀元前から使われており、優れた加工性、特に延ばしたり、曲げたり、成形するといった加工は他の金属よりも容易で、当時は武具や農具に加工されて使われていたといわれています。

 現代で銅は銀に次ぐ優れた導電性や熱伝導性といった特徴から電子機器部品や調理器具、ヒートシンクとして使われています。また非磁性体でもあり磁気が厳禁な装置の部品に使われたりします。

 

 銅合金は銅に合金元素を添加した金属で、目的によって様々な種類があります。

機械的性質や耐食性の向上といった目的は他の合金でもよく見られますが、銅合金は色彩が豊富なことも特徴で合金元素の種類や量で色彩が変わってきます。例えば日本円硬貨は5円が金色、100円が銀色と色が違いますが1円以外は全て種類の異なる銅合金です。

 

 また銅は上記でも触れたように優れた導電性を持っており、電化製品の他にも車や半導体といった電気を使用する機器に汎用的に使われるため、好景気で企業や国が設備投資に積極的になると銅の需要が高まり、銅の価格は上昇する傾向になります。一方で不景気で設備投資の余裕がなくなると価格は下降傾向になります。このような理由により銅価格の変動を見ると世界経済が好調かが分かるという諸説があり、銅は価格が経済の指標になるほど多くの場所や分野で使われている金属になります。

 

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銅の種類と特徴

 銅は以下のような多くの特徴を持っています。

 

導電性・・・

 銅の最大の特徴は優れた導電性で銀の次に高い導電率を持っています。そのため電線をはじめ、電気を通す目的の部品に使われます。

 

熱伝導性・・・

 銅は熱伝導性に優れており熱を伝えやすい材質です。熱を伝えやすいといわれるアルミ二ウムよりも熱伝導率が高いです。この特徴を利用して鍋やフライパンといった調理器具やヒートシンクなどの部品として使われます。

 

高熱には弱い・・・

 銅は200℃を越えると軟化するため、通常は200℃以下で使用されます。

 

非磁性・・・

 銅は非磁性で磁気厳禁の電気機器の測定装置や防爆工具に使用されます。

 

耐食性・・・

 銅はそのまま大気中にさらしておくと表面に酸化被膜を作るので腐食には強い金属になります。特に他の金属が苦手な海水にも良好な耐食性を持ちます。しかし、硝酸や塩酸、硫酸などには侵されるので一部環境においては注意が必要です。

 

変色しやすい・・・

 銅は切削加工の直後などは光沢のある銅色(あかがねいろ)をしていますが、先ほどの酸化被膜によりすぐに赤褐色になります。また酸化被膜が成長すると黒色に変化したり、環境によっては青緑に変色します。装飾目的で銅色を保つには対策が必要になります。

 

展延性・・・

 銅は展延性がよく変形しやすいので、曲げ加工や絞り加工などの塑性加工をしやすい金属です。一方で切削加工では柔らかすぎるので刃先への溶着やバリを抑えるような刃物や切削条件を選ぶ必要があります。

 

 銅は以上のような特徴を持っています。導電性や熱伝導性などアルミと似ており能力としては銅の方が良いですが、銅の方が重量があり(アルミの約3倍)、高価なので使われる場所は限られてきます。

 銅や銅合金はJISだとCと4桁の数字で表されます。銅や純銅と呼ばれる種類の材料は銅の純度や残留酸素量により概ね3種類に分けられます。

 

 

銅合金の種類と特徴

 銅合金は銅に種々の合金元素を添加して性質を向上させた金属です。

 

真鍮(銅-亜鉛合金)

 JISでは黄銅と表される合金で5円玉に使われている銅合金です。銅に対して主に亜鉛を20%~40%添加した合金のことを指します。亜鉛の比率が高くなるほど硬度が増し、色は黄色に近くなります。記号の分類は亜鉛の含有量で分かれています。一例として以下のようなものがあります。

C2600・・・銅と亜鉛が約7:3の割合。七三黄銅、イエローブラスと呼ばれます

C2700・・・銅と亜鉛が約6:4の割合。六四黄銅と呼ばれます

 

黄銅は銅よりも程よく硬度が高いため、切削加工もしやすい素材になります。実際の切削加工では黄銅に鉛を添加して切削性を高めた快削黄銅がよく使われます。快削黄銅2種のC3604が代表的なものになります。しかし近年ではRoHS指令など有害物制限により鉛が制限される場合があるため、鉛フリーの快削黄銅などが出てきています。

 

黄銅としては他にも六四黄銅にアルミ、鉄、マンガンを添加し、強度、熱間鍛造性を向上させた高力黄銅などもあります。

 

真鍮(銅-亜鉛合金)は亜鉛量が20%以下ものだとJISでは丹銅と呼ばれるようになります。亜鉛量が少なくなるほど硬度は低くなりますが、色は銅に近い赤みのある色に変わっていきます。レッドブラスともいわれ、装飾品や金属管楽器に使われます。

 

白銅(銅-ニッケル合金)

 白銅はキュプロニッケルとも呼ばれ、その名前の通り光沢のある白みを帯びている銀色に近い色をしています。50円と100円に使われている合金です。

 銅は展延性の良い材質ですが延ばしていく際の硬化(加工硬化率)が強いです。白銅にするとこの硬化が比較的弱くなるため、深絞りや圧延など塑性加工性が良くなります。強度に関してはニッケル量が多くなるほど高くなりますが、約60%を境に低下していきます。

 耐食性も向上し硝酸など強酸には耐えられませんが、その他の酸や海水には耐性があります。また高温強度(250℃)も黄銅より高い値を示しますが、炭素や硫黄といった不純物に敏感なので注意が必要です。

種類としては硫黄を除去するためマンガンを添加したC7060やC7060に対しニッケル量を増やしたC7150があります。

 

洋白(銅-ニッケル-亜鉛合金)

 洋白は銅-ニッケル合金に亜鉛を添加した合金です。白みを帯びていますが白銅とは少し異なる色彩です。500円玉に使われている合金です。

 この合金の特徴としては疲労強度やバネ性が向上しており、バネとして使われる場合があります。この特徴は亜鉛量に影響され多くなると強くなります。色彩を活かして装飾品や金属管楽器などにも使用されます。種類としてはC7351やバネ用洋白のC7701、切削加工性を向上した快削洋白C7941があります。

 

青銅(銅-スズ合金)

 銅にスズを3~7%添加した青銅は展延性があり、型打加工もできる比較的硬い銅合金です。りん青銅は青銅にりんを添加したような銅合金でスズは約3~9%、りんは約0.03%~5%の範囲で各添加量の違いにより種類が分かれています。りん青銅は青銅と比較してバネ性や耐摩耗性に優れており、バネや歯車など機械部品に使用されることがあります。JISではC5212などC5191などの種類があります。

 青銅には青銅鋳物と呼ばれる材質もあり銅、スズ、亜鉛、鉛の合金です。靭性や耐摩耗性、耐海水性、耐食性があり、鋳造しやすい材質でかつては大砲の砲身に使われていたことから砲金とも呼ばれています。現在ではその特徴を活かして鋳物や船舶用の部品、プロペラなどに使われています。また10円玉は青銅鋳物で作られています。代表的な種類としてはCAC406やCAC403などがあります。

 青銅の色彩としてはスズの量が増えるに従い赤銅色から黄金色になり、さらに増えると銀白色になります。

 

アルミニウム青銅(銅-アルミ合金)

 アルミニウム青銅は約6%~11%のアルミと鉄、ニッケル、マンガンを添加した合金です。青銅という名前ですがスズとの合金でありません。

構造用鋼材と同程度の引張強度や優れた耐摩耗性があり、耐食性、耐海水性も良好な銅合金で銅や他の銅合金よりも軽いのが特徴になります(銅の約0.8倍)。外観は黄金色で黄銅とよく似ています。用途としては車両、機械、船舶のシャフトやブッシュ、ピニオンギアなどに使われます。種類としてはC6191やC6280、アルミニウム青銅鋳物としてはCAC703などがあります。

 

 

まとめ

・銅は優れた導電性や熱伝導性といった特徴があり、機能的な材質として使われたり、優れた展延性で曲げ加工や絞り加工といった塑性加工性が良い。

・銅合金は機械的性質や耐食性の向上といった目的の合金化の他、豊かな色彩を活かした装飾用などの目的にも多く使われる。

 

 

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今回は銅・銅合金の特徴や種類について説明しました。

 

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