技術コラム

【図表で解説】ステンレスの種類・性質の違いについて

ステンレスとはどんな金属?

 ステンレスは耐食性の向上を目的に主成分を鉄(Fe)として、クロム(Cr)やニッケル(Ni)などを含有させた錆びづらい合金鋼です。一般的にはクロム(Cr)の含有量が10.5%以上の合金鋼がステンレス鋼と呼ばれます。

 しかしステンレス鋼は種類が多く、成分や性質がそれぞれ違います。今回はステンレスの種類と代表的なステンレスについて解説していきます。

 

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ステンレスの種類

 冒頭にも書きましたが、一言でステンレスと言っても数多くの種類があります。

 例えばJIS規格では65種類のステンレスが規定されており、海外の規格も合わせると200種類以上あると言われます。今回は日本でよく使われるJIS規格のステンレスを見ていきます。

 

 JISではステンレスの記号は「SUS + 3桁の番号 + (記号)」の構成となっています。

先頭のSUSの由来は

 Steel    ;鋼

(special)Use;(特殊)用途

 Stainless  ;ステンレス

の頭文字と言われています。

 

 3桁の番号でそのステンレスの成分と性質が規定されています。大きく分けると300番台、400番台、600番台があります。表1に大分類と主な特徴を記載します。

 

 最後の記号は細かな規定を表しており、アルファベットなどで表されます。例えばSUS304LはSUS304よりも含有炭素が少なく規定されています。

 

 

代表的なステンレス

ここではそれぞれの分類とよく使われるステンレスの特徴を紹介していきます。

 

オーステナイト系ステンレス(300番台)・SUS304、SUS303、SUS316など

 オーステナイト系ステンレスはクロム-ニッケル系と呼ばれるステンレス鋼です。

 この分類のステンレスが最もサビづらく、靭性もあるので様々な産業や業界で使われています。またオーステナイト系は一般的にイメージされる磁性のないステンレスになります。一方でニッケル(Ni)を多く含有しているので高価な材料です。他にも応力腐食割れが起きやすいという特徴があり、海水中など一部の環境で使用するには注意が必要です。

 

 切削加工の面では靭性があり、加工硬化が大きいので難しい材料になります。また磁性のない材料ですが加工によって、わずかに磁性を持つことがあります。

 代表的な材質はSUS304です。これは18-8ステンレスとも言われており18%のクロム(Cr)と8%のニッケル(Ni)を含有するステンレス鋼です。オーステナイト系ステンレスはこのSUS304を基本として他の元素を添加したり添加量を調製することで色々な性質を持たせており、300番台のオーステナイト系ステンレスは他の分類に比べ種類が多いです。

 オーステナイト系ステンレスの中でも快削性に優れた材質があり、SUS304に快削成分である硫黄(S)やリン(P)を添加したSUS303が切削加工で多用されています。SUS303は切りくずが分断しやすく、SUS304と比較しても工具寿命が長くなります。

 

 オーステナイト系ステンレスの用途としては、靭性や耐食性に優れているため、医療機器部品や自動車部品、各化学装置の部品など、多くの産業で使われています。また優れた耐食性を活かして、スプーンやフォークといった洋食器や温水機、キッチン用品などの家庭用としても用いられています。

 

 

 

フェライト系ステンレス(400番台)・SUS430、SUS430F、SUS430LX、SUS430J1Lなど

 フェライト系ステンレスはクロム系のステンレス鋼です。この分類はステンレスの中ではサビやすい種類になり、引張強度もそこまで高くはありません。しかしニッケル(Ni)などの希少な元素が入っていないため、比較的安価な材料になります。またフェライト系ステンレスは磁性を持っています。

 切削加工では強度や伸びが小さめなので加工しやすい材料ですが、サビは発生するので管理には注意が必要です。

 

 フェライト系ステンレスで代表的なものはSUS430になります。成分としては18%のクロム(Cr)を含有する合金鋼であり、炭素(C)を0.12%以下に抑えられている加工性の良い材質です。またSUS430の中には切削加工し易いように、快削成分である硫黄(S)の含有量を増やしたSUS430Fという材質も存在します。

 近年では製錬技術の向上に伴いさらに低炭素化できるようになったことから、加工性が向上したSUS430LXや耐食性が改善されているSUS430J1Lといった材質もあります。

 

 フェライト系ステンレスの用途としては、自動車の部品や厨房器具、温水器などの屋内用部品に多く、比較的サビの影響を受けづらい部分でSUS304の安価な代替材としても用いられます。

 

 

マルテンサイト系ステンレス(400番台)・SUS440C、SUS420J2、SUS416など

 マルテンサイト系ステンレスはフェライト系ステンレスと同じクロム系のステンレスですが、フェライト系に比べクロム(Cr)が少なく、炭素(C)が多く添加されている材料です。

 焼鈍材の段階でも比較的引張強度が高い材質ですが、焼入れにより高強度を得られることのできる材料です。一方で炭素が多い分耐食性はフェライト系よりも劣ってしまいますが、炭素鋼よりは耐食性があります。またこのステンレスも磁性を持っています。

 切削加工の面でもフェライト系と比較して難しい材質になります。焼入れ後は硬度が増し、材質によっては研削による仕上げ加工が必要になる場合もあり、また錆も発生するので注意が必要です。

 

 マルテンサイト系ステンレスで特に引張強度の得られる材質はSUS440Cです。

 成分としては17%のクロム(Cr)と1.1%の炭素(C)が含有されており、マルテンサイト系ステンレスの中では高クロムで最も炭素(C)の添加量が多い材質です。このため熱処理を行うとHRC58以上に硬度を上げる事が出来ます。

 マルテンサイト系ステンレスにも切削性に特化した材質があり、SUS416、SUS410F2などがその代表です。

 

 マルテンサイト系ステンレスは耐食性、高い強度、耐摩耗性などの特徴から刃物、タービンのブレード、軸受、機械構造用部品(シャフト・ボルト・バルブシートなど)やプラスチック射出成形用の金型などに使われており、主な材質としてはSUS420J2が工業用や一般家庭用など、汎用的に用いられています。

 

・その他にもフェライト系とオーステナイト系の特徴を併せ持つ、SUS329J1のようなフェライト・オーステナイト系ステンレス(二相系ステンレス)や、析出硬化により引張強度や硬度を高められる、析出硬化系のSUS630、SUS631などのステンレスもあります。

 

 

まとめ

・ステンレスは鉄を主成分としてクロム、もしくはクロム-ニッケルを含有する合金鋼です。

・ステンレスは「SUS+番号」で表され数多くの種類があり、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系などの分類があります。

・ステンレスと言っても種類によって強度や耐食性の違い、磁性の有無など性質が異なります。

 

 

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