技術コラム

【図表で解説】歯車(ギア)の種類・用途について

歯車について

 歯車とは「連続して噛み合う歯で力を伝達する機構」のことを指します。

他の伝達方法にはチェーンやベルトなどがありますが、歯車は力を伝える方法として、最も確実で強力なものになり、滑らずに動力を伝達する機能に優れています

 また、歯車の形状やピッチ、歯数を変えることで、伝達動力の扱う力の範囲や回転数、トルクを調節する事ができ、様々な機械に用いられています。

 

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歯車の用途

 歯車はネジやベアリングのように幅広く使われている機械要素です。

 歯車の動力伝達は、とても小さなものから数万馬力のような大きな力まで幅広い範囲で使う事ができるため、用途の幅広さが特徴になり、身近なものには時計や電動工具、自動車など様々なものに使われています。

また歯車の用途は多様にあり、自動車一つとってもトランスミッション、ワイパーの駆動部、パワーウインドウの駆動部などで使われています。

 大きな動力伝達を使う用途では産業機械プラント、風力発電、工業用機械、船舶タービンや船舶用減速機などの回転駆動部に歯車が取り付けられており、動力の伝達に用いられています。

 

 

歯車の種類

 歯車にはたくさんの種類があり、これを分類する方法としては歯車の関係位置によるものが一般的で、平行軸、交差軸、食い違い軸の3つに分類されます。

 平行軸の歯車には平歯車、はすば歯車、内歯車、ラックなどがあります。

 交差軸の歯車にはすぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車などがあります。

 食い違い軸の歯車にはねじ歯車や円筒ウォームギアなどがあります。

以下に代表的な歯車の種類を示します。

平行軸の歯車

平歯車(スパーギア)・・・

歯すじが軸に平行な直線である円筒歯車です。

製作が容易であるため、動力伝達に最も多く使われている歯車です。

ラック・・・

平歯車と噛み合う直線歯形の歯車です。

はすば歯車(ヘリカルギア)・・・

歯すじがつるまき線である歯車です。平歯車よりも強く静かな歯車として、広く使われます。

注意として、軸方向力(スラスト)が発生します。

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内歯車(インターナルギア)・・・

平歯車と噛み合う、円筒の内側に歯がある歯車です。主に遊星歯車や歯車型軸継手などに使われます。

はすば内歯車・・・

歯すじがつるまき線で円筒の内側に歯がある歯車です。ねじれ角、ねじれ方向が同じ歯車と平行軸で嚙み合います。

やまば歯車(ダブルヘリカルギア)・・・

右ねじれと左ねじれのはすば歯車を組み合わせた形状の歯車です。はすば歯車のように強く静かで軸方向力(スラスト)が発生しません。

表1.平行軸の歯車の種類

 

交差軸の歯車

すぐばかさ歯車(ストレートベベルギア)・・・

歯すじが直線のかさ歯車です。比較的製作が容易なため、動力伝達用のかさ歯車として最も普及しています。

まがりばかさ歯車(スパイラルベベルギア)・・・

歯すじが曲線でねじれ角を持ったかさ歯車です。すぐばかさ歯車よりも製作は難しいですが、強く静かなかさ歯車です。

表2.交差軸の歯車の種類

 

食い違い軸の歯車

円筒ウォームギア・・・

円筒ウォームとこれと噛み合うウォームホイールの総称です。長所としては1段で大きく減速できる、静かであるという事が挙げられます。しかし伝達効率が悪いという短所もあります。

表3.食い違い軸の歯車の種類

 

引用;小原歯車工業株式会社 KHK歯車技術資料 P3~P4

 

 

歯車の精度

 JISでは歯車の精度を“歯形の誤差”、“歯すじの誤差”、“ピッチの誤差”(単一ピッチ誤差、隣接ピッチ誤差、累積ピッチ誤差)、“歯溝の振れ”で規定しています。

 佐渡精密ではJIS規格にて歯車を測定・評価していますが、他にもJGMA(一般社団法人 日本歯車工業会)での規格もあります。

 

 歯形とは歯車の噛み合う部分の円周方向の形状で、一般的な歯車の形状はインボリュート曲線になっています。

図1.インボリュート曲線

(1つの円に巻き付けられた糸を緩まないようにほどいた時の軌跡からできる曲線)

 

 歯すじとは歯車の噛み合う歯部分の歯幅方向の形状のことで、平歯車では直線、はすば歯車ではつるまき線になっています。

 歯車の測定では歯形、歯すじが理想的な形状に対して、どれだけずれているかで評価します。

 

図2.歯形と歯すじ

 

 ピッチの誤差とは、歯車の噛み合う歯の間隔のズレのことです。ある1歯を基準に2歯目、3歯目~が理想的な位置からどれだけズレているかを評価するのが“単一ピッチ誤差”、単一ピッチ誤差の合計が“累積ピッチ誤差”と言います。また隣り合う歯の理想的な間隔のズレを“隣接ピッチ誤差”と言います。

 

 歯溝の振れとは、鋼球やピンを歯溝(歯車の歯と歯の間)の歯形部分にぴったりと接触させたときの半径方向の最大差のことで、歯の位置の半径方向の振れを評価しています。

図3.ピッチ誤差の種類と歯溝の振れ

 

歯車の精度は、上記のような歯車の噛み合う部分の形状の正確さや歯の間隔や位置の正確さで決まり、精度の良い歯車は噛み合った時に滑らかでガタの少ない歯車となり、力の伝達効率が良い、騒音が少ない、などの効果があり、電気自動車のeアクスルなどで採用されており、カーボンニュートラルのニーズから高精度歯車の需要は拡大していくと思われます。

 

 佐渡精密では平歯車や、はすば歯車などの試作を承っております。スカイビングや5軸マシニングセンタ、歯車研削盤などの設備を取りそろえ、特殊モジュールにも対応します。特殊モジュールの歯車の試作をなるべく早く作りたい!という方は是非お問い合わせください。

 

 

まとめ

・歯車は確実で強力に動力伝達を行える機械要素のため、幅広い用途で使われています。

・歯車の分類は歯車の関係位置によるものが一般的で、平行軸、交差軸、食い違い軸の3つに分類されます。

・JISでは歯車の精度を“歯形の誤差”、“歯すじの誤差”、“ピッチの誤差”(単一ピッチ誤差、隣接ピッチ誤差、累積ピッチ誤差)、“歯溝の振れ”で規定されており、精度の良い歯車は力の伝達効率が良い、騒音が少ない、などのメリットを持ちます。

 

 

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