技術コラム
【図表あり】金(Au)の特徴や用途について簡単に解説!
金とは
金は元素記号Au(ラテン語のAurumに由来)、英語でゴールド(Gold)と呼ばれる自然界に固体として存在する金属で、レアメタル(希少金属)の一つです。
世界で発見されたのは、7000年前あるいは8000年前と言われ、日本では8世紀の西暦749年と言われています。世界四大文明の一つの古代エジプト文明では、ツタンカーメン王のマスクに金が使われました。
金はその美しさと希少性により古来から重宝されてきました。現代においては、金属特有の性質を活かして多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。
金の物理的特性
金属光沢
金属光沢とは、金属表面に光が当たると金属中の自由電子が振動します。そして、当たった光と同じ波長の光が金属から放出されることで、見かけ上反射して光って見えます。金はオレンジがかった黄色の美しい光沢をもちます。
図1.金属光沢の仕組み
展性
展性とは、叩いたり圧力を加えることで薄く広がる性質のことをいいます。また、薄く広げた金属を箔(はく)と呼びます。金は1gで0.5m2(約畳3分の1)に広げることができ、厚さは0.1ミクロン(1万分の1mm)まで薄くなります。
延性
延性とは、引っ張ってのばすことで線状に引き延ばすことができる性質のことをいいます。金は約3000mまで延ばすことができます。
電気伝導性・熱伝導性
電気伝導性(導電性)と熱伝導性は、それぞれ物質内を電気または熱が伝わる性質のことを言います。金は銀、銅に次いで電気伝導率(導電率)と熱伝導率高い物質です。
表1.各金属の導電率と熱伝導率の参考値
金の化学的特性
安定性
金は金属の中でイオン化傾向が最も小さい金属です。イオン化傾向とは、金属が空気中や水、水溶液中で電子を放出して陽イオンになろうとする性質のことを言います。そのためイオン化傾向が小さいということは、金は空気中で酸化されにくく、水や強酸性の溶液にも安定な金属と言えます。ただし、王水(濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積で混合したもの)には溶けます。
表2.金属のイオン化傾向と反応性との関係
耐腐食性
金は高い腐食性をもっています。そのため酸やアルカリに強く、空気や海水に触れても錆びることなく長期間光沢のある美しい外観を保ちます。
金の用途
金は佐渡精密の工程内で扱うことはありませんが、様々な分野で使用されています。
装飾品
宝飾品として指輪、ネックレス、ブレスレット、イヤリングなどに使用されます。美しい光沢と高い価値から、高級時計にも使用されます。金の消費量の半数以上が宝飾品と言われています。
工業
普段の生活で目にすることはないと思いますが、スマホやパソコンなどの電子機器にも使用されています。金が持つ高い導電性や耐熱性、耐腐食性を利用して回路基板の銅線の金メッキや接点やスイッチ、コネクタなどに使用されます。半導体産業ではワイヤーボンディング(ICチップの電極部とリードフレームや基板上の導体との間を細いワイヤーで接続する方法)のワイヤーに金が使われます。
医療
医療に使用される金でよく知られるのは金歯ではないでしょうか。これは耐食性や耐久性、生体適合性、アレルギーを起こしにくいことから使用されています。他には、放射線治療の際の照射用マーカーや関節リウマチ治療の金製剤にも使用されます。
金融
歴史的に通貨として使用されてきました。現在も金地金や金貨として貯蔵され、投資対象として取引されています。
その他
絵画、彫刻、建築の装飾の他、食用としてソフトクリームやお酒に金箔、美容関係にはフェイスパックや美容液などに金箔や金粉が含まれているものもあります。また金には紫外線や太陽からの放射熱などを反射する特性があり、宇宙飛行士のヘルメットや宇宙船・人工衛星の保護材に使用されています。
余談ですが、お店の文房具コーナーなどで見かける折り紙や絵の具の色の中に金色があると思います。それらの中に本物の金は含まれていないようです。
まとめ
・金は金属特有の光沢をもち、展延性に優れていることから加工がしやすく、高い導電性・熱伝導性をもちながら、自然界での反応性が低く化学的安定性が非常に高い金属です。
・宝飾品のほか、普段使っているスマホやパソコンの内部や医療、投資、美術、食品など幅広い分野で活用されています。