技術コラム

【図表あり】パレットチェンジャーとは?用途や種類について解説!

オートパレットチェンジャー(APC)とは

 APCとは、「Automatic Pallet Changer」の略称であり、自動パレット交換装置のことです。

NC工作機械において、ワーク(+治具)を取り付けたパレットを自動で加工機の内外に搬送する役割を果たします。特に横型のマシニングセンターに装備されていることが多いです。

図1.APC(オートマチックパレットチェンジャ、自動パレット交換装置)

 

引用:モノタロウ マシニングセンタの基礎講座自動化の仕組み

 

 

APCの構造

 

図2.実際のパレットの例(写真は機外の様子)

 

パレット

 工作機械の中には、「パレット」を装備しているものがあります。ワーク(=加工される材料)を取り付けて加工機の内外に搬送するための台を指します。

 

チェンジャー機構

 パレット交換を行うための機構です。ロボットアーム等でパレットを搬送・交換します。

 

駆動源

 油圧やサーボモーター等。

 

 

 

 

※補足:イケール(治具)について

図3.

4面イケールに専用治具を取り付けた様子

 

 主に横型マシニングセンターにて、パレット上にイケールと呼ばれる治具を取り付け、さらにイケールに専用治具を取り付けてワークを固定する方法があります。

 4面それぞれに治具を取り付けることができ、土台のパレットを90°ずつ回せば、加工したい面を選ぶことができます。

 

 

APCの用途

APCの用途とは、ワーク脱着の外段取り化で機械稼働率を上げ、生産性向上に繋げることです。

 APCを搭載した機械では、加工中のワークとは別に機外のパレットでワークの脱着が可能なため、機械の停止時間が短縮され、稼働率の向上が図れます。パレットを複数台装備している機械では、夜間や休日といった長時間の無人運転が可能です。

 

※加工機が動作している状態での段取り(ワーク脱着や工具・治具準備等の作業)を外段取りといい、逆に加工機が停止している状態での段取りを内段取りといいます。

 

 

APC動作の流れ

 NCプログラムでパレット交換指令が予め組み込まれており、加工終了と同時に自動でパレット交換・搬送を行います。その後、所定の正確な位置にパレットがセットされ、未加工ワークの加工が開始します。

 

 

図4.従来の加工サイクル

 

 

図5.APCを用いた加工サイクル

 

 

※補足:APCとAWCの違い

 APCの類語にAWC(Automatic Work Changer:自動ワーク交換装置)があります。

APCがワークを積載したパレットごと交換するのに対し、AWCはワークのみを交換する装置のことを指します。これには、産業用ロボットを設置して脱着を行う方式等があります。

 

 

APCの種類

 パレット交換にも様々な種類がありますが、弊社保有機では大きく分けて3種類あります。

 

Ⅰ.水平移動タイプ

構造:加工後に扉が開き、パレットが横に移動して

   機内と機外のパレットが交換されます。

   ※なお左図はパラレル・スイングアーム方式と呼ばれています。

 

特徴:比較的構造がシンプルでメンテナンスがしやすいです。

   設置面積が比較的少なく済みます。

 

加工機:VS50(日立精機)

 

 

 

 

Ⅱ.ターンタイプ

構造:加工後に扉が開き、パレットが180°回転して

   機内と機外のパレットが交換されます。

 

特徴:水平型よりも構造が複雑で、設置スペースを広めに取る必要があります。

   高速でパレット交換ができます。

 

 

加工機:A55・a61・a71(牧野フライス製作所)

    SH-400(森精機)

 

 

 

 

Ⅲ.マルチパレットタイプ

構造:複数のパレットを同時に扱うことができます。

   パレット収納数が多く、

   加工機とは別に専用のマガジンを設けてあります。

 

特徴:パレット数が多いので、

   一度段取りすれば長時間の無人運転が可能です。

   管理する数が増えるので、より注意が必要です。

 

加工機:D200Z(牧野フライス製作所)

 

 

 

 

 

パレットマガジンを活用した弊社の事例

 弊社が2023年11月に導入した加工機D200Z(牧野フライス製作所)についてご紹介します。

 

 D200Zの隣に大容量のパレットマガジンを後付けし、量産品の加工を夜間や休日でも無人自動運転できるようにしました。

 

図6.D200Z配置図

 

個々のパレット上には治具とワークが載せてあり、1つのパレットの加工が終わると、予めスケジューラで設定したパレットが呼び出され、次々に他のパレットが加工機内に搬送され加工されていきます。同一の製品だけでなく、多品種の製品を段取り替えせず加工することが可能です。

 

 

 パレットマガジンに併設されている段取りステーションにてワークを脱着した後、ロボットアームでパレットマガジン内に搬送され、さらにその後加工機内に搬送されます。

多品種の連続加工が可能な分、工具も大量に必要とされるため、オプションの大容量工具マガジンを付けています。

 

 

パレットマガジンや工具マガジンを導入したことにより、長時間の無人運転が可能となり、機械稼働率が約80%に達し、生産性が飛躍的に向上しました。

 

 

まとめ

・パレットとは、ワークを取り付けて加工機の内外に搬送するための台のことです。

・APCとは自動パレット交換装置のことで、工作機械の自動化・効率化に欠かせないものです。

・パレットやAPCの交換方式には様々な種類があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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