技術コラム

インコネルとは?特徴や切削加工性について解説!

発行日:2025年7月25日

インコネルとは?

 インコネルは、ニッケル基合金の一種で、高温環境での耐久性や強度に優れた特徴を持つ合金です。ニッケルを主成分にし、クロムや鉄、モリブデン、コバルト、アルミニウムなどの元素を含んでいます。特に、厳しい温度条件や腐食環境において高い性能を発揮するため、航空機エンジンや化学プラント、原子力発電所など、過酷な条件下で使用されることが多いです。なお「インコネル(Inconel)」は、スペシャルメタルズ社(Special Metals Corporation)の登録商標であるため、一般的には「ALLOY(アロイ=合金)」の名称で表されます。

 

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インコネルの特徴

 高温強度と耐熱性

 インコネルは、非常に高い温度でもその強度を維持することができ、800~1000℃以上の高温環境でも使用可能です。これにより、ガスタービンやジェットエンジンの部品に適しています。

 耐腐食性

 クロムを含むことで、酸化や腐食に強い性質を持ちます。特に酸化性の高い環境や塩水などに曝される状況でも耐久性を発揮します。

 優れた溶接性

 インコネルは溶接性にも優れ、複雑な形状の部品を作成する際にも非常に有利です。高温下での使用を想定した設計において重要な特性です。

 

 

インコネルの種類

インコネルは、主に以下の種類に分類されます。

 インコネル600(ALLOY600)

 ニッケル(約72%)とクロム(約14~17%)が主要成分で、特に酸化に強い特徴を持ちます。温度範囲は-200℃から+1000℃まで対応可能です。化学プラントや熱交換器などに使用されます。

 インコネル625(ALLOY625)

 高温環境下での腐食や酸化に対する耐性がさらに強化されている種類です。モリブデン(約8~10%)が加わることで、耐酸性が向上しており、酸性やアルカリ性環境での優れた耐性が特徴です。化学プラントや海洋環境で使用されることが多いです。

 インコネル718(ALLOY718)

 ニッケル、クロム、モリブデン、鉄などを含み、特に高温での強度と耐摩耗性に優れています。航空機エンジンの部品やガスタービンブレードに多く使われます。

 

 

インコネルの用途

インコネルは、特に以下の分野で使用されています。

 

・航空宇宙分野:航空機エンジンのガスタービンやロケットエンジンなど、高温環境下で使用される部品(タービンブレード、熱交換器、燃焼室など)に広く使用されています。

 

・化学プラント:酸化性環境や腐食性の強い化学薬品に曝される部分に使用されます。

 

・海洋環境:海水中での使用に優れ、海洋プラットフォームの設備に利用されています。

 

・原子力発電所:高温高圧の環境で使用される部品にも使用されることがあります。

 

・石油・ガス産業:高温高圧の環境下で耐腐食性と強度を求められる設備に使用されます。

 

 

インコネルの切削加工性

 インコネルは靭性が高く、所謂 “粘り”のある材質で、尚且つ加工硬化が強い難削材です。高温に対する強さに加えて酸化や腐食にも耐性がありますが、その分熱伝導が低く、切削時に工具への負荷が大きくなります。

 切削抵抗

 切削抵抗が高いため、切削中に摩擦熱が発生しやすく、刃先の温度上昇を抑えるために切削油などの冷却剤の使用が重要です。特にドリル加工では、エンドミルや旋削加工に比べて難易度が高いため、オイルホイール付きの工具を選定するなど、加工条件や適切な給油方法の工夫が求められます。また切削速度や送り速度についても、材料の種類や加工内容に応じて慎重に設定する必要があります。

 

 刃物の摩耗

 熱伝導が低いため、工具に切粉がまとわりつきやすく、一般的な鋼やアルミニウムよりも刃物の摩耗が早く進行します。工具の選定はもちろんですが、一本の工具でどこまで削れるのか、「除去量」=限界点を把握することも非常に重要です。

 

 表面品質

 切削後の表面が荒れることが多く、仕上げ加工が難しい場合があります。そのため、表面粗さや寸法精度が求められる場合、細心の注意が必要です。

 

 

 工具の選定では、硬質材料用の超硬工具やコーティング工具(CVD、PVDコーティングなど)などが効果的です。

 また、セラミック工具にAl2O3(アルミナ)TiN(チタンナイトライド)をコーティングし、ロータリー切削工具を使用した加工実験を行ったところ、工具寿命が2倍に、且つ仕上がりも良好な結果となった事例もあります。

引用;あいち産業科学技術総合センター

「コーティングセラミック工具を用いたインコネル 718 の加工」

 

 

他の金属との切削加工性の違い

 アルミニウム

・切削性:アルミニウムは、非常に切削性が良好な材質です。切削抵抗が低いため工具摩耗が少なく、加工中に発生する熱も比較的低いです。切削温度が低いため、冷却材の使用が少なくても問題ないことが多いことも特徴です。

 

 ステンレス鋼

・切削性:ステンレス鋼はインコネルよりは切削しやすいものの、硬度が高く、加工中に熱が発生しやすいです。刃物の摩耗が激しくなる傾向があり、インコネルに近い高温での作業が求められる場合もあります。

 

・切削抵抗:インコネルほどではなくとも高い切削抵抗があり、適切な切削速度と冷却が必要です。

 

 軽金属(チタン、マグネシウムなど)

・切削性:チタンなどの軽金属はインコネルと似た特性を持ちますが、インコネルほどの硬さはありません。ただし、チタン合金は切削中に高い温度が発生しやすく、刃物の摩耗が早く進行するため、冷却と切削条件が重要となります。

 

 鉄鋼(炭素鋼、合金鋼など)

・切削性:一般的な鉄鋼材料は、インコネルに比べて切削性が良好です。硬度が低いため、切削速度を上げても問題なく加工できる場合が多いです。しかし、合金鋼や高硬度鋼になると切削性が低下し、インコネルと似た問題が発生します。

 

 ほかニッケル基合金(ハステロイ、モネルなど)

・切削性:ハステロイは、インコネルと同様に高い耐熱性を持ち、特に耐食性が優れています。インコネルほどではありませんが切削抵抗も高いため、加工が難しい材質です。モネルは、インコネルやハステロイに比べて加工しやすく仕上げも容易ですが、耐熱性や耐食性は少し劣ります。

 

 

当社インコネル加工事例

飛行機 インコネル625 ジェットエンジン部品

小型ジェットエンジン部品のタービンブレード加工事例です。材質は、インコネルという難削材耐熱合金使用し、5軸機で削り出し加工を行いました。本製品の小型ジェットエンジン部品のタービンブレードは、1対型で製作しています。一体型となっているため、......

 

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インコネルの切削加工部品製作も佐渡精密まで!

 今回はインコネルの特徴や切削加工性について説明しました。

 

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