技術コラム
熱処理とは?特徴や種類など、基本について解説!
金属熱処理とは
日本熱処理工業会によると、“金属熱処理とは金属材料に加熱と冷却の組み合わせによって製品の形を変えることなく性質を向上させる技術のこと”で、性質とは強度、硬さ、ネバさ、耐摩耗性、耐衝撃性、耐食性、被削性、冷間加工性を指します。
熱処理も切削加工や塑性加工のような金属加工の1つとして分類されています。
熱処理を行う金属材料としては鉄が最も多く、添加元素の種類と熱処理の組み合わせによって性質が付与され、鋼やステンレスになるのです。
非鉄金属ではアルミニウム合金やチタン合金に熱処理加工が多く用いられ、同じく添加元素の種類と熱処理の組み合わせによって様々な性質が付与されます。
熱処理の方法
熱処理の加工方法には、硬くしたい、柔らかくしたい、サビにくくしたい、金属組織を均一にしたい、などの目的に応じた様々な加工方法があります。
大別すると、部品全体を処理する“全体熱処理”と、主に表面のみを処理する“表面熱処理”に分けられます。
今回は素材として最もポピュラーな鋼(炭素鋼)について話していきます。
・全体熱処理・・・
素材全体に行う熱処理で、“一般熱処理”と“特殊熱処理”に分けられます。特殊熱処理は一般熱処理を施した素材をさらに改善する目的で行われます。
・表面熱処理・・・
内部組織はそのままに、表面に対して行われるものを表面熱処理といい、“表面硬化熱処理”と”表面改質熱処理”に分けられます。
“表面硬化熱処理”は表面を加熱・冷却することで硬化させる技法で、”表面改質熱処理”は窒素や硫黄を拡散、蒸着させて表面の改質を行う技法です。
鋼の熱処理の基本
熱処理は素材を加熱・冷却し様々な性質を付与する加工になります。ここでは炭素鋼を硬くする目的で行い、工業的には欠かすことができない焼入れを例にして解説していきます。
一般的に鋼は700℃付近まで加熱すると赤づき、結晶構造や性質が変化し始めます。この性質の変化を“変態”と呼び、変態の始まる温度を“変態温度”といいます。
鋼の場合は変態温度を越えると“オーステナイト”という組織に変化します。
変態温度は炭素鋼の場合、含有する炭素量により上下し、素材内の炭素量の偏りによって場所ごとにわずかに異なります。完全にオーステナイトにするためには変態温度より高い温度まで加熱する必要があり、また素材内で温度の偏りが出ないように加熱温度で一定時間保持します。このオーステナイトから油冷や水冷により黒づく温度(550℃)以下に急冷すると‟マルテンサイト‟という硬く脆い組織になります。
焼入れでできたマルテンサイト組織は脆いため、焼き戻しという熱処理で靭性を持たせる操作を行います。
焼入れのイメージとしては、刀鍛冶が刀を鍛えている光景が思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか?刀身を赤熱させた後、水につけて冷却しているのはこの操作で刀身の鋼を硬くするためです。マルテンサイトを得るためには“変態温度を越える温度に加熱する”こと、そして“急冷する”ことが重要で、加熱が変態温度に達していない、または急冷できていない(冷却速度が遅い)とマルテンサイト組織を得る事ができません。
このように、熱処理では目的の性質を得るために“加熱温度”と“冷却速度”を適切に操作することが重要です。
また素材の軟化、硬化や応力除去など、目的によっては加熱温度の“保持時間”も重要な要素となります。
まとめ
・金属熱処理とは、金属材料に加熱と冷却の組み合わせによって製品の形を変えることなく性質を向上させる技術のこと。
・大きく分けると、部品全体を処理する“全体熱処理”と、主に表面のみを処理する“表面熱処理”に分けられる。
・熱処理では“加熱温度”、“冷却速度”、“保持時間”が重要な要素として挙げられる。
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