技術コラム

半導体製造装置の部品製作とは?求められるポイントと材質について

 ここでは、半導体製造装置の部品製作におけるポイントや材質について説明します。

 

半導体製造装置の部品製作とは

 半導体製造装置の部品製作とは、半導体を製作する機械の部品を最適な素材、かつ最適な精度で製作することを指します。

 

 半導体は、非常に微細な傷ひとつで機能しなくなってしまう物質です。このことから半導体製造装置は、微細な傷ひとつ付けずに、高い精度で半導体を製作することを求められます。

加えて、工作機械には、母性原理というものがあります。これは、工作機械の精度以上の部品は製作できないといったものです。要するに、0.01mmの精度の部品を製作する際は、0.01mmの精度を持つ工作機械では製作することはできず、0.001mmの工作機械が必要だということです。

 この母性原理に従うと、半導体製造装置の部品を製作するためには、半導体製造装置以上の精度を実現できる工作機械で部品を製作する必要があるということがあります。

 また、半導体製造装置の部品と偏に言っても様々な種類の部品があり、特殊な形状をしているものが多々あります。具体的な例を挙げると、チャンバ、ベース、バルブ、ラックシャフト・バルブシート・バルブシートキャップ・ピンなどです。これらを始めとする半導体製造装置の部品の全ては、それぞれの用途に適した素材と精度で製作されています。

 

 したがって、半導体製造装置の部品製作とは、最適な素材、かつ最適な精度で半導体製造装置の部品を製作することであると言えます。

 

半導体製造装置の部品製作に求められるポイント

半導体製造装置の部品製作に求められるポイントは、以下の2つが挙げられます。

・精密金属加工技術

・最適な素材選定と設計によるコストダウン提案

精密金属加工技術

 半導体製造装置の部品製作において、第一に求められることは精密金属加工技術です。精密金属加工技術とは、金属に0.001~0.01mmの精密加工を施す技術のことを指します。

>>精密金属加工とは?定義や特徴について

 

 上述の通り、半導体は非常に微細な傷ひとつで機能しなくなってしまう物質です。そのため、0.001~0.01mmの精密金属加工技術は、半導体製造装置の部品製作において必要とされます。

 また、多くの場合、精密金属加工は切削加工でなければ実現できません。製品に加工跡が残りやすいプレスや溶接では、垂直度や平面度などの精度を実現が難しいためです。

これらのことから、材料を直接切削し複雑形状を実現する精密金属加工技術が、半導体製造装置の部品製作に必要とされます。

 

最適な素材選定と設計によるコストダウン提案

 半導体製造装置の部品製作において、次に求められることは、最適な素材選定と設計によるコストダウン提案です。

一般的に、部品製作において、「形状の複雑さ・精度の高さ・材料の値段」の3点はコストアップに繋がります。また、半導体製造装置の部品製作は、必然的にこの3点が必要とされ、コストアップに繋がってしまいます。このことから、半導体製造装置の部品製作において、顧客からの図面をそのまま受け取り、製作を行うだけではなく、図面を受け取った後に最適な素材選定と設計によるコストダウン提案をすることが求められます。例えば、部品の用途を考慮した最適な精度の提案、性能を維持した上での代替素材の提案、強度を維持した最適設計の提案などが求められます。

 

半導体製造装置の部品製作に求められる材質

半導体製造装置の部品製作に求められる材質は、高い耐久性、高い強度などがあります。

半導体製造装置の部品製作に用いられる素材の例としては、以下のものが挙げられます。

チタン合金

 チタン合金は、軽量性(鉄の半分の重さ)、強度、耐食性にも優れています。

しかし、熱伝導率の低さ、親和性が高さから、難削材とされています。

チタン合金を加工する際のポイントとしては、工具へのコーティング、水溶性切削油の選定、切削熱のコントロール、引張応力の抑制などが挙げられます。

インコネル

 インコネルは、ニッケルが主成分の超耐熱合金です。名前の通り高温でも強度の落ちない材料であり、その性質から半導体製造装置の他にも、航空機エンジンなどの過酷な環境で使用されています。しかし、耐熱性の高さは高温強度の高さに直結します。また、親和性の高さも持ち合わせており、これらの性質から超難削材の一つとされています。

 インコネルを加工する際のポイントとしては、耐熱温度が高いセラミックス製工具の使用、親和性の高さによる高温における化学反応を防ぐための回転速度の抑制、工具寿命の管理などが挙げられます。

アルミ合金

 アルミ合金は、軽量性(鉄の3分の1の重さ)、比強度、耐食性などに優れています。その他にも電磁波や熱の反射性、真空特性にも優れているため、半導体製造装置の部品に適した素材となっています。しかしアルミニウム中でも、粘度が高い純アルミニウム(1000系)や、シリコン含有率が高い一部の4000系や6000系のものは、難削材とされています。

 アルミ合金を加工する際のポイントとしては、ダイヤモンド工具の使用や工具の高速回転により、溶着を防ぐことなどが挙げられます。

ステンレス合金

 ステンレス合金は、主にニッケルとクロムを混ぜた合金で、耐食性、耐熱性、強度に優れたています。特に耐食性に関しては、ステイン(錆び)+レス(にくい)という名前の通り、金属の中で最も錆びにくいとされています。オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系なども分類があり、それぞれ異なる性質や用途を持ちます。ステンレス合金中には、強度や親和性の高さから、難削材とされているものもあります。

 

 

各材料の性質や加工難易度については、こちらで詳しく解説しております。

>>各材料の切削加工性について解説

>>チタン合金について

>>アルミニウムについて

>>ステンレス合金について

 

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